自律神経失調症を初診で双極性感情障害で障害厚生年金の請求完了

先日、双極性感情障害で障害厚生年金の請求が完了しました。障害認定日での請求です。

事例紹介

  

請求人は就労中のパワハラにて自律神経失調症を患い、その後病状に改善が見られず双極性感情障害と診断されました。初診日は令和21月なので障害認定日は令和37月になり、今回障害認定日での請求をしたという流れです。

論点は、請求人は10年ほど前に精神科への通院歴があり、そこが初診日になるかと、請求障害と初診日の傷病が異なる点の2つでした。

  

障害の原因となった傷病の意味 自律神経失調症は双極性感情障害の初診日になるか?

自律神経失調症と双極性感情障害では病名が異なります。障害年金を請求する障害名と初診の時点の障害名が異なる場合、初診日はどちらになるのでしょうか?

「初診日」とは、障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日と定義されています。ポイントは「障害の原因となった傷病」の部分で、請求する障害の原因となった傷病が初診日であると説明されています。本事例に置き換えると障害年金を請求する障害(双極性感情障害)の原因となった傷病(自律神経失調症)につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が初診日という事になります。

 自律神経失調症と双極性感情障害の相当因果関係について

「障害の原因となった傷病」の関係について整理しましたが、無条件に障害の原因となった傷病と請求する障害の関係が認められるのでしょうか?具体例を挙げると、障害の原因となった傷病が「肝機能障害」で請求する障害が「うつ病」として、「肝機能障害」が初診日になるかです。風が吹けば桶屋が儲かる、の様に非常に広く因果関係を認められれば肝機能障害が初診日になる可能性もワンチャンあるかもしれませんが、障害年金の実務では相当因果関係が採用されています。相当因果関係はAからBの事実が医学的に相当程度の確率で発生する場合に認められる因果関係の考えで、AからBが生じるという単純な因果関係の考えに、相当程度の確率で発生する場合と制約を加えることが特徴です。先ほどの肝機能障害とうつ病の例では肝機能障害からうつ病が発生することは医学的に証明されていないので肝機能障害の通院をうつ病の初診日には認定されないことを意味します。ただし、あくまでも肝機能障害と認定された日が初診日と認定されないだけであって、肝機能障害を悲観しメンタルが低下しその後精神科に通院した場合はその通院日が初診日になる可能性があるのは当然です(絶対そこが初診日になるかは相当因果関係の話になります)。そこをごっちゃにしない様にしないといけません。

本事例に話を戻すと、自律神経失調症と双極性感情障害に相当因果関係があれば自律神経失調症が初診日となります。

 相当因果関係とは別の考え方 同一傷病性について

先ほど説明した相当因果関係はABの傷病が別傷病であるという前提ですが、もし、ABが同一傷病で病名が異なるだけならどうなるのでしょうか?ここでは同一傷病の場合、初診日がどうなるかを説明します。

自律神経失調や双極性感情障害等の精神疾患は別傷病なのか同一傷病なのかで判別し難い場合があります。

初診日の整理は行政のマニュアルである「障害基礎の手引き」に機械的に定められています。

抜粋すると

① 同一の傷病で転医があった場合は、1番初めに医師等の診療を受けた日

② 過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師の診療を受けた日(治癒したと認められない場合は、傷病が継続しているので同一傷病と扱う)

③ 傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日となる。

①同一の傷病で転医があった場合は、1番初めに医師等の診療を受けた日

これは、傷病が同一なら1番初めに医師等の診療を受けた日が初診日になる。当然の帰結です。

②過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師の診療を受けた日(治癒したと認められない場合は、傷病が継続しているので同一傷病と扱う)

これは、過去の傷病が治癒したら、再発後の通院日が初診日になることを意味します。これもある意味当然ですが、治癒したかどうかが一つの論点になります。何をもって治癒とするか難しい部分です。

③傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日となる。

これは、本事例に当てはまります。傷病名が確定していない状態で、後々傷病名が確定し確定後の傷病と確定前の傷病が同一傷病であれば確定前の初診日が請求する障害の初診日としています。

本事例では自律神経失調と双極性感情障害等が同一傷病となれば初診日は自律神経失調症で通院した日となります。これは実務でもよくあります。精神疾患の場合初診でいきなり「うつ病」と診断されるケースはまれで、長期的に診察を重ねる過程で病気から障害へ移行するからです。

私が年金サポートした事例で初診日

① 初診時「うつ傾向」     請求時 「双極性感情障害」

 

② 初診時「記憶力障害」   請求時 「広汎性発達障害」

 

③ 初診時「不眠症、神経症」 請求時 「うつ病」

 

④ 初診時「病名不明 精神科受診記録のみ」 請求時 「広汎性発達障害」

 

⑤ 初診時「内科受診で神経症」 請求時 「うつ病」

 

 

10年前に通院した受診歴は初診日なるか?

  請求人は10年前に精神科を受診していますが、これが初診日になのでしょうか?

  ここは大事なポイントなので10年前に通院していた精神科に電話してカルテの有無、受診状況等証明書の作成が可能かどうか確認しました。結果は作成可能という事で、受診状況等証明書を作成してもらいました。その受診状況等証明書を主治医に渡し、経緯も説明した上で今回請求の障害の初診日がいつか確認しました。結果、初診日は10年前ではなく令和2年ということなのでそれで診断書を作成してもらい、病歴就労状況等申立書を作成し申請しました。結果はまだわかりませんが、多分初診日については問題ないと思われます。

主治医は10年前の傷病は治癒している。理由は傷病の原因と今回の請求障害の発生原因も異なるし、10年前の傷病以降は日常生活を送れていることを挙げていました。

 

終わりに

 

初診日は障害年金の肝になる部分で、ここが確定しないと年金請求も行えません。

もし、初診日でお困りの場合は是非ご相談ください