広汎性発達障害で事後重症請求にて障害厚生年金の請求は完了

先日、広汎性発達障害の障害名で障害厚生年金の請求は完了しました。請求方法は事後重症請求です。

 

事後重症請求とは?

 障害年金の請求方法は認定日請求と事後重症請求の2パターンに分かれます。認定日請求は初診日から16か月経過時点の障害認定日の状態で請求する方法です。

事後重症請求は障害認定日では障害等級に該当しないが、その後障害状態に該当する場合に請求する方法です。

認定日請求は初診日から16か月経過時点の障害認定日の障害状態で請求します。

例えば初診日が令和元年111日なら障害認定日は令和2711日になります。そこで認定日請求をする場合は令和2711日~令和21010日までの診断書を用いて請求します。もし、その期間を外れた診断書、例えば令和21011日現症の診断書で請求する場合は認定日請求になるのでしょうか?事後重症請求になるのでしょうか?答えは事後重症請求になります。

 上記のケースでは令和21011日以降の現症の診断書で請求する場合は全て事後重症請求になります。

 

実務で多い事後重症請求のパターン

実務で多い事後重症請求のパターンは障害認定日に通院していない場合です。診断書は医師が作成するので、通院していないと作成することはできません。当時を想像して診断書の作成は不可能です。

本事例においても障害認定日に病院に通院していないので認定日請求ができずに事後重症請求になりました。

 

  初診日の特定

本事例は広汎性発達障害での障害年金請求事例でした。初診日は平成2612月で仕事でのミスが多くあったので健忘症の疑いで会社から病院受診を命令されたのが始まりです。受診の結果健忘症ではないという結論でしたが、発達障害の疑いがあったので別の病院で検査が行われ、2番目の病院で発達障害の可能性は告げられました。発達障害と告げられてから、数年間問題なく就労・生活はこなせていましたが、仕事でのトラブルで再度「発達障害」と告げられ年金請求に至ります。

 

年金請求は「発達障害」で請求を行い、受診状況等証明書は平成2612月の健忘症疑い否定の病院で作成してもらいました。1番目の病院で「発達障害の疑い」を指摘され2番目の病院で「発達障害」と診断を受けているので、これら通院歴を受けて現症の病院に続く形になります。しかし、完成した診断書を確認すると確かに初診日は平成2612月となっていましたが、診断書⑦「発病から現在までの病歴及び治療の経過」に平成2612月以前に精神科に通院していた事実が記載されていました。確かに、発達障害で通院したのは平成2612月ですが、それ以前の精神科受診と発達障害に相当因果関係が有ると初診日がその精神科受診の時期に変更になる可能性があったからです。その精神科受診の時期によっては保険料未納にかぶってしまう可能性があったので是が非でも初診日は平成2612月で進めていかないといけません。

 

修正依頼の方法

診断書を修正してもらうには、それなりの根拠が必要です。特に診断書はカルテ(診療録)を根拠に作成されるので、そのカルテの内容を修正するにはカルテしかないと考えました。そこで、平成26年以前に通院していた精神科に受診状況等証明書の作成を依頼しました。

受診状況等証明書があれば、平成26年以前の通院歴の証明ができ、もしかしたらこの時期の傷病名と「発達障害」との相当因果関係も否定できると考えたらからです。

結果は平成26年以前の通院歴の正確な期間が分かり、当時の病名は統合失調症でした。医師より「統合失調症」と「発達障害」との間には相当因果関係はないとの意見を貰えたのと同時に診断書の平成26年以前に精神科に通院した記述を削除してもらえました。

もし、医師が平成26年以前の通院した記述を削除してくれなかった場合は、この期間の「受診状況等証明書」を添付し「統合失調症」と「発達障害」との間に相当因果関係がない事を主張しようと考えていました。

 

知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱い

知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱いについて資料があるので簡単に説明します。根拠は平成23年7月13日 【給付情 2011-121】という年金機構内の内部文章になります。

本件はまさにこの事例になります。なので、もしこの文章を本事例に当てはまると初診日は統合失調症の初診になります。本事例ではどちらが初診日でも年金請求は可能でしたが、初診日が後の方が年金を受給した際に金額が増えるのとやはり発達障害の初診日は平成2612月である方が事実に即しているとの判断から上記の対応を取りました。

因みに同一疾患は別疾病ではない、つまり、初診日は前発の疾病で受診した時期になることを指します。

 

終わりに

この事例は当初はスムーズに進む案件と考えていましたが最後の最後で初診より前に通院の履歴があることが判明し、その事実をどの様に処理しようか考えさせられた事例でした。

障害年金は些細な記述が支給の可否を分ける場合もあります。完成した診断書を見て何か違和感があれば無理に申請するのではなく、一歩立ち止まり全体的に矛盾が無いか確認することをお勧めします。